笠木 雅史 (カルガリー大学)
ウィリアムズの文脈主義
ウィリアムズの認識論は、分析的認識論があまりポピュラーではなく、近年の議論も詳しく紹介されているとは言い難い日本において、比較的よく知られている。
筆者が知る限り、3本の論文が彼の立場について書かれ、また非公式の学会ではあるが(筆者による)発表が1本ある。
これらのうち3つまでがかなり好意的にウィリアムズの文脈主義を扱っているのに対し、
少なくとも現在の筆者は彼の立場には不明瞭な点、問題点が無数にあると考えている。
そのうち、1.懐疑論の応答に際して文脈主義を採用する必然性が示されていない。2.他の文脈主義に比べ、「文脈」をどう個別化するのかが明らかではない。
3.いわゆる認識論的実在論の否定と、ウィリアムズの採用する可謬主義は両立不可能である。
4.認識論的実在論の否定は彼の認識論的主張そのものを不可能にする(この論点のみダンカン・プリチャードによる)。
この4点は少なくとも現行のウィリアムズの立場内では解決不可能であるか、他の彼の主張と不整合に陥っている。
こうした指摘を行い、彼の立場を批判的に検討することが本発表の目的である。