太田 宏平 (東京都立大学)
「ダメットの双対性とludics 」

 同一律は何故正しいのか、推論規則は何故正しいのか、公理は何故正しいのか。 これらの問いは歴史的にいっても関連する問題圏域からいってもたいへん幅の広いものであると言ってよいだろうが、しかしそれよりも先に問わなければならないことがある。 それは、同一律なり推論規則なり公理なりを用いた活動がなぜ理性的・論理的なものであると言えるのか、という問いである。 言語哲学風に言うなら、それらに従った語の使用がチェスのような規則に従った単なるゲームの実践ではなくて、証明とか主張とかいった「言語の使用」であると言えるのは何故だろうか、 ということになる。本発表ではジラールのludics(J. -Y. Girard, Locus Solum, 2001. )という体系を手がかりに、ダメット及びマルティン=レフの意味の理論の反省を行うことで、 この問いに接近を試みる。技術的な説明を簡潔で直観的に行った上で哲学的に楽しめる時間を過ごしたいな、と考えているので専門の異なる方にもご参加いただけると幸いです。

 具体的には次のような話題を予定している。

・ダメットの導入則の自己正当化の議論を批判しつつ、『形而上学の論理的基礎』における安定性stabilityの要請の意義を検討する。

・同一律および公理が「論理的」であることをコピーキャット戦略およびデーモンから捉える。

・判断を中心に据えて論理及び意味を捉えるとはどういうことかを、直観主義型理論の意味の理論と、二階乗法加法的線形論理のludicsによる解釈とを比較することで考察する。 ここでは推論と正規化・カット除去という二つの理性的実践の関わり方が鍵になる。