講演者: 高橋 久一郎 (千葉大学)
講演タイトル: 真理と生き方の技法の探求
かなり面映いタイトルをつけましたが、私の「哲学の現場」について少し話し、議論の素材としたいと考えます。現在、私が行っている仕事は、おおよそ以下の5つです。つまり、
1 アリストテレス研究
2 倫理学の哲学の研究
3 情報倫理学の研究
4 大学における哲学・倫理学教育の検討
5 千葉大学における教育管理業務
ちょっとだけ説明しましょう。1は、私の出発点であり、「オーヨーづいている古典学者」である高橋はアリストテレスを捨てたと噂されましたが、そんなことはなくてならすと毎年一本ほど論文を書いています。もっとも一昨年の「哲学会」発表で宇宙論的目的論の可能性を考えると宣言したことから今度は高橋はほら話を始めようとしていると言われているようですが。(歴史的研究とその現代的意義)
2は、倫理学ではなく倫理学の哲学です。自然主義的倫理学の可能性を考えるということで、ここ3年ほどは講義や演習はこれが中心です。まだまとまった形にはなっていませんが、14年度で一区切りつけるつもりです。(倫理学の哲学の意義)
3は、「応用倫理学=倫理学」がらみの14年度が最終年度となる学術振興会『情報倫理の構築』プロジェクトのメンバーとしての仕事です。もっとも倫理学的なことをしているかというとそうでもなくて、情報が倫理を考えるうえでどのような意味を持つかといった部分を分担しています。「倫理学は応用倫理学だと言いながら自分は「基礎論=倫理学の哲学」ばかりやっている」と学生には言われています。(倫理学と倫理学の哲学の関係)
ここまでがまあ「学術」的な仕事で、4と5は生臭く志の低いとなります。
「日本哲学会」「日本倫理学会」合同ワーキングメンバーとして4に関しては、14年度の日本哲学会でセッションが開催され、そこで報告します。(現代における哲学と哲学教育の意義)
5については、13年度は文学部教務委員長として学部カリキュラムの改定と、「哲学教官集団」のメンバーとしてコア科目「哲学と倫理」を全学の必修授業とすることを試みました(残念ながらこちらは8割に終わりました)。14年度はコア科目の実質化の作業をすることになっています。(哲学の「生き残り策」)
これらの仕事が私の中で統合されているのか? 統合されていないとすれば私は何をしているのか? 統合されているとすればどのような仕方・枠組みにおいてであるのか? さらに、そうした統合・その枠組みはまともであるのか? あるいは、まともでないとすれば、まともな統合のあり方はあるのか? といったことについて話したいと考えています。